「モリのアサガオ」と死刑

  • April 22, 2008 22:41

先日、例の光市母子殺害事件の高裁での判決が出て、大方の予想通り死刑が言い渡されました。

死刑は当然という意見と、死刑廃止派の意見といろいろありますが、当然という意見が大半のような気がします。

死刑に関しては漠然と絞首刑になるということくらいしか知らなかったのですが、最近、郷田 マモラさんの「モリのアサガオ」という刑務官と死刑囚を描いた漫画を読んだので少しでしょうがいろいろ知ることができました。

  • 死刑が確定してから執行されるまで平均7年くらいかかる
  • 死刑確定囚は刑を執行されて初めて刑罰を受けることになるので、労役を課せられる懲役囚とは違い執行されるまでは比較的自由であること(頭髪は自由、服も自分の好きなものを着れる、お金があればある程度自由に食べ物を買い求めることができる、雑誌や本などをある程度自由に読める)
  • 死刑執行日は事前に本人には伝えらず、当日の朝、突然言い渡されて執行される。
  • 死刑執行は確定順に順番に執行されるのではなく、ランダムに執行される。

僕は漫画が好きなので、いろいろな漫画を読んできましたが、この「モリのアサガオ」は傑作中の傑作に値するのではないかと思います。

他の僕が傑作だと思っている作品(例えば、火の鳥・ブッダ(手塚治虫)、ベルセルク(三浦建太郎)、ピンポン(松本大洋)、Pink(岡崎京子)、、、)には作者のよく分からない部分、一種の狂気みたいなものが作品の根本にあると思うのですが、郷田マモラさんの描く「モリのアサガオ」にはそういった狂気じみたものがありません。

ただ丁寧に取材し、取材対象と誠実に向き合い、誠実に物語を作っていく。

強いて言えば誠実さこそが郷田マモラさんが常人とかけ離れた才能なのではないかと思います。

主人公の刑務官「及川直樹」は罪と向き合い反省した死刑囚、全く反省せずに自己正当化している死刑囚、冤罪の問題、獄中結婚、死刑反対派、被害者遺族、死刑囚の家族、死刑執行に関わる刑務官の苦悩などを通じて死刑制度への「賛成」「反対」の狭間でゆれつづけます。

最後には一応の結論を出しますが

「ぼくは今も、、、これからも深い森の中をさまよい続けるんや」

と、今後も迷い続けるとして終わっています。

死刑制度に関して僕自身は廃止する必要はないと思っていたし、今後もそう思うと思うのですが、いろいろ考えられる作品でした。

ネタバレ各巻感想

「この世で最後に見るものはお前の顔にしたい、、、」

冒頭で友人の死刑執行を行う主人公。

物語は主人公が新人刑務官として赴任する8年前に戻る。

主人公を通じて読者も死刑囚、死刑囚舎房のこと、死刑確定順ではなくランダムに事前に告知されることなく死刑執行されることを知る。

拘置所は一般社会からは見えない深いモリのようなもの、死刑囚は死刑執行は必ず朝に実行されることから朝に咲いて昼にはしなびてしますアサガオのようなものという示唆。

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冒頭に物語の終わりを見せる手法。男性向けの漫画には珍しい終わりを見据えた物語だということが分かる。

死刑囚たちのエピソード。

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物語の大筋には絡まず、死刑囚たちのエピソードを見せる巻。

死刑囚の罪は許されないにしても、それぞれの事情があり、やはり彼らも人間ということを描いている。

孫に会うことができなかった老死刑囚が夜中に孫を想って枕を抱く姿に涙する主人公。

反省せずに気楽に生きている死刑囚「星山」の改心に全力を尽くす主人公。

反省させることに成功するも、ずっと後のことだと思っていた星山に死刑執行が実施される。

死刑執行に関わった刑務官の苦悩。

渡瀬満に死刑判決が下る

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読んでて震えが止まらなかった。

1巻では詳しく描かれなかった死刑執行の様子が描かれる。

初めて死刑執行に関わりショックを受け退職する先輩、死刑執行に関わりすぎたため精神を壊してしまった刑務官を通じ職務として人を殺す職業があることを描いている。

死刑囚のエピソード。

被害者遺族の問題が中心。

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かつて恋人を殺された先輩刑務官里中と、被害者家族の苦悩。

ずっと憎まれ役だった里中が一気にいい人になる。

この後も好プレー連発。こういうのはずるいけどいいな。

主人公の出生の秘密。冤罪の問題。

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1巻から伏線を張りまくってた「山本」の謎が分かる。

死刑反対派のおばちゃんがマトモな人でよかった。

冤罪の話。

主人公の出生に大きく関わった深堀の死刑執行。

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死刑制度最大の問題といわれる冤罪の話。

自供で死刑というのはどうかと思うがどうなんだろう??

あと一巻で終わるというのに主人公と渡瀬は仲良くならない。

冤罪の加害者家族のエピソード。

渡瀬満の真実と死刑執行。

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ついに主人公と渡瀬が分かり合う。

死を受け入れていた渡瀬が状況がかわったことで

「死刑になりたくない。生きたい」と主人公に訴える。

主人公は渡瀬に自分の死刑についての答えをだす。結論は最初にわかっているのですが、やはり悲しくやりきれない気持ちになりました。